Webパフォーマンスについて

Webパフォーマンスについて記事を書いています。パフォーマンス管理は、品質管理です。ですから計測データを元に記事を書いてます。

越境ECで成功するために

盛り上がりつつある越境EC

この1~2年で、越境ECが盛り上がってきています。

越境ECとは、「国際的な電子商取引のこと」であると、Wikipediaでは書かれています。

従来より、海外からの日本の物品購入の需要は高く、それも日本人が思いも浮かばない商品が、想像のつかない理由で売れたりします。

例えば、私が聞いた話では、フランスでは、仏壇が美術品として需要があるそうです。
また、スペインでは、座布団が、日本料理店から盗まれる程に人気があるそうです。

それ以外にも、海外在住の日本人が、日本の商品を買いたいという需要もあります。

最近の越境ECブームの火付け役は、「爆買い」ですよね。中国から日本に来た観光客が親戚の分も含めて、日本の炊飯器や水洗便座を競って買うというのは、よくニュースなどでも取り上げられます。

また岡山県の高級果物が、中国の富裕層によって、通販でバカ売れしているという話は越境ECという言葉が流行る前から有名です。

また、約10年ぐらい前に、町工場への海外からの発注も話題になりました。

古来より、異国の産物は、その希少性によって商品価値が高く、それらの取引を求めて通商路としてシルクロードを生み出し、そして、大航海時代には未知なる土地と未知なる物品を求めて、海洋貿易ルートの発達を促しました。

ビジネスにおいて、日本市場だけに目を向けず、海外市場へと目を向ける事が大きなチャンスをもたらすのは、特に日本固有・特有の商品であれば、歴史を振り返っても、ごく自然なことなのだと思います。

越境ECで乗り越えなければいけない事項

さて、そこで、最近よく目にするのが、越境ECコンサルタントや、越境ECセミナー、メディアの越境EC特集などです。

実際に越境ECをやるとなると、乗り越えないといけない事項がいくつかあります。

  • 輸出可能かどうか。その商品の輸出に対する自国と相手国の規制の確認。
  • 対象地域と発送方法をどう定めるか。特に食品関係。
  • 価格設定をどうするか。特に、為替変動のリスクヘッジ
  • 対象地域向けのWebサイトでの情報発信。英語だけでなく、中国語、韓国語、その他の言語でのコンテンツをどうやって発信するか。
  • サポート。受発注処理や、問題が生じた際の対応をどうするか。

越境ECコンサルタントの方々や、越境ECセミナーで語られる事は、そういった類の解決策等かと思います。

しかし、実は、それ以外にも、乗り越えなければいけない事項があります。
それは、Webサイトの速度です。

日本のWebサイトのつくり方では越境ECは本領を発揮できない

海外向けサービスをやっていて、実際に海外でのパフォーマンス計測をされた事があれば、ご存じだとは思いますが、日本のWebサイトのつくり方では、海外では失敗します。

それは、楽天市場に右倣えの長い、ごちゃごちゃしたページのUIだけでなく、表示速度や繋がりやすさといったWebサイトパフォーマンスも大きな要因です。

どの越境ECコンサルタントも、どの越境ECセミナーも、どの越境ECの記事も取り上げない海外での表示速度

下のグラフは、Dynatraceで発表した米国でのスマートフォンサイトのパフォーマンスデータ(ダウンロード完了時間)の比較です。(調査はDynatraceですが、ソースはBI Intelligenceから)

楽天も米国に進出していますが、rakuten.comのトップページのパフォーマンスが16秒近くかかっていて、他の米国のオンラインショッピングサイトに比べて、異様に遅いのが分かります。

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この手の話題になると、「海外向けにはCDNを入れないと」「CDNを入れれば大丈夫」という方がいらっしゃいますが、www.rakuten.comはCDN(Akamai)が入っています。それで、この秒数です。

そもそも、スマートフォンサイトの場合、CDNを入れても、携帯網の仕組み上、大して高速化は見込めません。

日本から、海外に進出している企業のサイトは、ほぼ同じような遅延を引き起こしています。

中国向けサイトでは、Googleのサービスを組み込んではいけない

次にご紹介するのは、とある中国向けのオンラインショッピングサイト(デスクトップ)の、北京での1日分のパフォーマンスデータです。

北京 ― China Telecom

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北京 ― Unicomf:id:takehora:20160405223127p:plain

「これは、サーバが日本だから、こういう結果になるんじゃないのか?中国は、金盾(Great Firewall)があるから」と思われるかもしれません。確かに、金盾(Great Firewall)は、問題になることが多いです。

しかし、実は、ここのサーバは、南京市にあるデータセンターに置いてあるのです。

ちなみに、AWSの北京リージョンが2014年に公開されましたが、北京のAWSから計測するとこんな感じです。

北京 ― AWS

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これは、何が原因かというと、Googleなのです。

北京 ― fonts.googleapis.comの計測データ

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北京 ― www.google-analytics.comの計測データ

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Google Analyticsなどについては、中国だけでなく、日本国内でも遅延要因です。

こういう分析は、RUM(Real User Monitoring)ではできなくて、どうしてかというと、遅延した場合は、データが取得できる前に離脱してしまうからです。

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配信品質を定常的に計測する越境ECサイトが成功する

日本でのECサイトは、つくりに問題が多いところが多く、はっきり言って遅いサイトばかりなのですが、通信キャリアが頑張ってくれているので、何とかなってます。

しかし、越境ECを展開するということは、非常に競争の激しい世界に出ていくという事です。特に速度についてです。

海外は、Webサイトパフォーマンスの熾烈な戦場

「海外がWebサイトパフォーマンスで競争が激しい?アメリカは理解できるけど、まさか中国は…」と思われますか?

実は、中国は、Webサイトパフォーマンスで最も熾烈な市場の一つです。

中国には、国内のWebサイトパフォーマンスの計測会社がいくつかあって、欧米のWebサイトパフォーマンス計測会社が入り込むのが難しい程に激しい競争をしています。

中国だけではありません、インドも、次から次へと、ECサイトを運営している会社は、Webサイトのパフォーマンス計測を定常的に行っています。

東南アジアは、スマートフォンサイトのパフォーマンス計測が非常に盛んです。

残念ながら、日本のECサイトは、品質管理において、海外勢より遥かに遅れているという事は、越境ECをされるのであれば、知っておいた方が良いです。

越境ECをするなら定常的な計測を

 越境ECをするのであれば、24時間365日、定常的な計測をされることをお勧めします。

インターネットは、全体を管理している人が居るわけではなく、様々なネットワークの集合体であり、常にどこかで問題が発生しています。国内でECサイトを運営するのとは事情が異なります。

どんなに魅力的な日本の商品を販売して、それを欲しがっている人が居たとしても、アクセスするのに時間が掛かって買えないとしたら、大きな機会損失です。

先に挙げた遅延の原因(Googleの例)は、遅延原因の一つでしかなく、他にも遅延要因は国によって異なります。

例えば、マレーシアやインドネシアでは、スマートフォンのブラウザとしてOpera miniが人気で、市場の半分近くのマーケットシェアを持っています。

マレーシアやインドネシアの人達がスマートフォンでWebサイトを閲覧するときの原因は何かというと、Opera miniが一旦、日本にあるProxyサーバにアクセスしてコンテンツを取得するために、インターネットの経路が長くなって、レイテンシの遅延が発生します。

また、海外向けに展開しているECサイトが、DNSTTLを、日本でやるように3分とか10分で設定すると、DNSの名前解決で遅延します。
少なくとも、3日ぐらいの長さには設定すべきです。

例えば、先に挙げたサイトの例ですが、DNSTTLを2時間に設定して、こんな状況です。

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世界的にDNSは遅延傾向にあるのです。

アジアのDNSのパフォーマンスデータ。参照元

DNS Performance - Compare the speed of enterprise and commercial DNS services | DNSPerf

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是非、肝に銘じて頂きたいのは、海外の人達は、日本の品質が高いと考えています。それは、即ち、Webサイトについても同じく品質が高い事を期待しているのです。

海外に進出したECサービスや、グループウェア等が伸び悩んでいる理由も、そこにあります。海外のユーザが期待した品質を達成できていないのです。そして、現地のサービスの方が遥かに高速に配信しているのです。

他にも、越境ECで有名になっているサイトのデータをいくつか持っていますが、みんな、同じか、より悪いです。

この状態でも、売上が上がっているのであれば、まだまだ機会損失があって、もっと売れる伸びしろがいっぱいあるという事なので、チャンスだと思います。

是非、越境ECサイトの配信品質の向上に努めましょう!